はじめに
月初になりましたので、G10通貨の強弱の月次分析をしたいと思います。
このシリーズ記事では、主要通貨のグループである「G10通貨」について、年初来と前月単月について、通貨強弱を毎月月初に相対比較しています。

「G10通貨」は、いわゆる「G10」(10ヶ国財務大臣・中央銀行総裁会議)とは構成が違います。G10通貨は、ドル、ユーロ、円、ポンド、豪ドル、NZドル、カナダドル、スイスフラン、ノルウェークローネ、スウェーデンクローネの主要10通貨で構成されています。

2020年年初来のG10通貨の強弱関係
2020年の年初来でみた通貨の強弱は、強い順に
- スイスフラン(茶)
- スウェーデンクローネ(黒)
- ユーロ(赤)
- 日本円(水色)
- 豪ドル(青)
- 米ドル(相対比較の対象なので、表示無しです。)
- NZドル(ピンク)
- ポンド(緑)
- カナダドル(紫)
- ノルウェークローネ(グレー)
の順になっています。オレンジ色の太い線は米国株(S&P500)です。
なお前月末時点の順位は;
- スイスフラン
- ユーロ
- スウェーデンクローネ
- 日本円
- 豪ドル
- 米ドル
- NZドル
- ポンド
- カナダドル
- ノルウェークローネ
でしたので、ユーロとスウェーデンクローネの順位が入れ替わりました。後は順位に変動がありません。
9月は、月初からの米国株の下落と共に、ほとんどの通貨は対ドルで下落し、パンデミック急落以降の上昇基調が変調して調整局面が続きました。
10月は、初旬は株高でリスクオン基調に少し戻ったものの、その後米国株の再下落、大統領選の結果待ち、米国追加経済対策の与野党協議難航、米国・欧州のウイルス感染再拡大などで、リスクオフの展開が続きました。
今回の対象はG10通貨だけなので、分類の軸は「経常収支が黒字か赤字か」「非資源国か資源国か」の2つです。2x2で以下の4グループに分けられます。グループ1がリスクに対して最も強靭な通貨で、グループ4が最も脆弱な通貨です。(ただし、G10通貨の全ての通貨は、他の途上国・中進国の通貨よりも強靭な通貨です。)
グループ | 経常収支 | 特性 | 対象通貨 |
1 | 黒字 | 非資源国 | JPY, EUR, CHF, SEK |
2 | 赤字 | 非資源国 | USD, GBP |
3 | 黒字 | 資源国 | AUD, NOK |
4 | 赤字 | 資源国 | NZD, CAD |
2020年の年初からの通貨の強弱は、おおむね、この4つのグループ通りの順番になっていることがわかります。

特にグループ1の経常黒字国・非資源国の通貨である「JPY, EUR, CHF, SEK」は、短期的に相場環境の変動があっても、経常赤字(+長期の低金利政策)のドルより相対的に強い、ことは踏まえておくと良いと思います。
2020年10月単月のG10通貨の強弱関係
2020年10月の単月で見た場合の通貨強弱は、強い順に
- 日本円(水色)
- ポンド(緑)
- スウェーデンクローネ(黒)
- スイスフラン(茶)
- 米ドル(相対比較の対象なので、表示無しです。)
- カナダドル(紫)
- NZドル(ピンク)
- ユーロ(赤)
- 豪ドル(青)
- ノルウェークローネ(グレー)
10月に強かった通貨は、円、ポンド、スウェーデンクローネ、スイスフランと続きます。(ポンド以外は、上のG10通貨分類表の「グループ1」の通貨です。)
ポンドは、EUとの通商交渉に関するニュースヘッドラインで振幅が大きかったものの、結局は前月末比プラスで終えています。
一方、前月末比で相対的に大きく下落した通貨は、リスク通貨の典型の豪ドルです。10月の中旬~下旬は、米国株の下落、大統領選の結果待ち、米国追加経済対策の与野党協議難航、米国・欧州のウイルス感染再拡大に伴い、リスクオフ優勢の展開になったことと、加えてRBAが利下げの再開を示唆したことによります。
また、ユーロは、欧州でのウイルス感染再拡大や行動制限の再開による経済停滞の懸念、ECBが次回の追加緩和を示唆したことなどによって、月の下旬に失速が顕著になりました。
長期的なドル安の「受け皿」として、(ユーロが脱落して)円の先高感が優勢となっており、ドル円は今後年末に向かって100円台を目指すのではという意見も出てきています。

日本ではメジャーな通貨ではないですが、スウェーデンクローネも強い通貨です。