はじめに
TradingViewには複数の種類の比較機能があります。本稿では、それらの比較機能を自在に使うことで分析の幅が広がるように、説明していきたいと思います。
比較の種類
まず一般的な比較の話から始めます。たとえば、以下の「A」と「B」という2つのチャートがあるとします。
この2つのチャートを比較したいとき、以下のような方法があります。
1.AとBの乖離(差分)をみる
AとBで、「同じX軸時点のY軸の値」の引き算をする方法です。
2.ある特定の地点(基点)からの増減をみる「相対比較」
AとBで、X軸のある特定の時点(基点)から、相対的にどれほど増減したかをみる方法です。下の図は、X軸の1の時点からの増減を表しています。
3.目盛りを同じにして、単純に比較する
AとBのチャートを、X軸とY軸の目盛りを同じにして、単純に重ね合わせて比較する方法です。2の相対比較に対して、この比較を絶対比較というのかもしれませんが、本稿では「単純比較」と呼ぶことにします。
TradingViewでは、上記の2番目の相対比較のことを「比較」と呼んでいますが、機能としては以上の3つの比較の方法すべてが可能ですので、以下順に説明していきます。
(注)その他
この他に、2つの値の「相関関係」をみるのも、比較に類する方法です。
当記事では、相関関係については、対象外とします。

TradingViewで比較してみよう
乖離(差分、減算)
二つの値の乖離(差分)をとりたいとき、すなわち引き算した値を直接チャートに表示したい場合は、TradingViewの左上の銘柄選択の欄に、直接2つの銘柄名を半角マイナス「-」でつないで入力します。
たとえば、 米国の10年物国債の利回りと日本の10年物国債の利回りの差をみたい場合は、「US10Y-JP10Y」と入力します。
結果表示されたものが以下のチャートです。

特に、国債の利回り差を見たいときにとても便利ですね。コロナショックによって、日米の長期金利差(名目金利)が急激に縮小していることがわかります。
また、たとえばユーロの分析には、ドイツ国債とイタリア国債の利回り差を分析することが有効です。
基点からの相対比較
この機能がTradingViewでいう「比較」機能を意味します。
これは過去のある特定の一定の時点を基点にして、その後相対的にどれほど増減したかを比較するものです。
例えば、「円とドルとユーロが、2020年の初めの時点から、どれほど相対的に増減したか」をみたいとします。
まずユーロドルのチャートを表示させます。(ローソク足からラインチャートに変更していますが、ローソク足のままでも構いません。)
次に、上部のメニューの「+」マークをクリックします。
タブは「比較」を選んでいることを確認してください。ここで銘柄コード入力欄にドル円のコードを入力します。
(ドル円のチャートを上下反転して表示させたいので、「1/USDJPY」と入力します。)
結果表示されたものが、以下のチャートです。
チャート右のY軸の目盛りがパーセントになっていること、またその0%のラインに注目してください。
現在(2020年8月5日時点)、ユーロドルもドル円(反転)も0%ラインより上なので、ユーロも円もドルに対して2020年年初より強くなっています。特にユーロは相対的により強くなっています。基点となるX軸の時点は、チャートの下のX軸をスライドさせれば変更することができます。

為替レートは、この比較方法が有効ですね。試しに、2020年初から「G10通貨」と呼ばれる主要通貨10通貨を全部比較すると、以下のようになります。
現在(2020年8月5日時点)、ドルに対して2020年年初より強くなっているのは、上からスウェーデンクローネ(黒)、スイスフラン(茶色)、ユーロ(赤)、豪ドル(青)、円(水色)です。
ドルに対して2020年年初よりまだ弱いのは、その下の、ポンド(緑)、NZドル(ピンク)、カナダドル(パープル)、ノルウェークローネ(グレー)です。

すべての主要通貨は、ドルに対して7月以降、高くなってきていますが、それでも2020年年初と比べてドルよりまだ安い通貨も結構あります。
どんな通貨がより強いでしょうか? → 近日中に別の記事を書きます。
単純比較
次に、目盛りをそろえて複数のチャートを単純にみたいときに使うのが、下の単純比較です。これは二つの値のチャートを同じチャートに単純に重ねて表示するもので、TradingViewでは「シンボルの追加」と呼んでいる機能です。
ポイントは、Y軸の目盛りをそろえるかどうかを選ぶことです。(←このポイントはとても重要です)
たとえば米国の10年国債利回りと日本の10年国債利回りを単純に比較したい場合、米国の10年国債利回りを表示させて、上部メニューの「+」マークをクリックするまでは、上の相対比較と同じです。
ここで、表示されるダイアログの上のタブで「シンボルの追加」を選択してください。
「メインチャートに重ねる」はそのまま選んでおいてOKです。ここで日本の10年国債利回りのコードを入力します。
これで表示されたチャートが、以下です。2017年以降を表示しています。
最初の米国10年国債利回りの目盛りが右側のY軸、後で選んだ日本の10年国債利回りの目盛りが左側のY軸に別々に表示されています。

利回りの比較のようなケースでは、Y軸の目盛りをそろえないとあまり意味はないですね。
そこで、ポイントは、左側Y軸を右クリックします。そこで「すべてのスケールを一つに結合」を選択します。(右側のY軸でも左側のY軸でも、そろえる側はどちらかを選びます。)
これで表示されたものが、以下のチャートです。
これで両国の国債の利回りを適切に比較できるようになりました。

この単純比較の機能では、ケースバイケースで、Y軸の目盛りをそろえるかどうかがポイントです。ぜひ試してみてください。